東京高等裁判所 昭和29年(ラ)53号 決定
本件記録に現われた疏明資料によれば、抗告人が昭和十八年四月一日相手方からその所有にかかる本件土地を建物所有の目的で期間二十ケ年、賃料一ケ月一坪につき金一円、毎月二十八日限り持参払の約束で賃借し、同地及び同市同区伊勢佐木町二丁目九十一番地に跨り木造亜鉛葺二階家一棟建坪八十四坪八合七勺外二階十五坪の登記した家屋を所有していたが、右家屋が昭和二十年戦災により焼失したことが一応認められるから、抗告人は罹災都市借地借家臨時処理法第十条所定の借地権者であるといわねばならない。
然るに既に同条所定の五箇年を経過した現在土地所有者たる相手方において本件土地を他に処分し、これにつき新たに権利を取得した第三者あるに至るときは抗告人は前記借地権を以て右第三者に対抗し得ざるに至る結果、その借地権は履行不能に陷つて権利の消滅を来す虞れがある。従つてかかる事態に対処するためには相手方の本件土地に対する権利の処分を禁止し以て借地権者の権利を保全してその実現を可能にするのでなければ、前記処理法の規定は空文に等しくなり、その企図した借地権者の保護を全うすることができない。この見地からすれば、前記借地権者は占有ないしは対抗要件を具えなくてもその借地権に基き、仮処分によつて所有者の土地処分を禁止することができるものと解すべきである。